相続手続の流れについて教えてください

 相続の開始から相続手続の終了まで、どんなことをしなければならなのか、その概要を見ていきたいと思いますが、これからは、お亡くなりになった方を「被相続人」と呼ぶことにいたします。なお、一般的な事例を想定して解説していますので、相続をめぐって紛争になってしまったり、特殊なケースについては解説を省略していることを、あらかじめお断りしておきます。
 

死亡届の提出 (7日以内)
 
 死亡から7日以内には、市区町村役場へ「死亡届」を提出しなければなりません。
 
遺言書の有無の確認(なるべく早く)
 
 死亡届の提出や、お通夜、葬儀などで慌ただしいと思われますが、一段落したら、遺言書があるかどうかを 確認しておきましょう。
  一般的に、よく利用される遺言書は、 被相続人がご自分一人でも作ることができる自筆証書遺言と呼ばれる遺言と、公証人に依頼して作成する公正証書遺言です。遺言書が作成されている場合は、大 事な書類として保管されていることが多いと思われますので、被相続人が生前に重要書類をしまっていた場所を確認してみましょう。
 なお、公正証書遺言が作成されている場合は、公証役場で原本が保管されており、どこの公証役場で誰の遺言書を保管しているのかを検索することもできます。ご自宅などで遺言書が見つからない場合には、お近くの公証役場で検索をしてもらうこともできるわけです。
 遺言書を発見した場合には、封を切らずに、その取扱い方法について、公証人やお近くの司法書士にご相談ください。

 
相続人の確定(1~2カ月を目安に)


 誰が相続人になるのかを確認する必要があります。ご家族の方であれば、誰が相続人になるのかはわかっていると思われますが、これから、不動産の名義変更や預貯金の解約をする度に、戸籍謄本などの公的な書類で、誰が相続人であるのかを証明していく必要があります。そこで、戸籍謄本などを取りそろえておく必要があるわけです。
 一般的には、被相続人の出生から死亡までの間に作られた戸籍謄本が全て必要になりますが、戸 籍は、法律改正やコンピュータ化などの理由により何度か作り替えられていますので、役所の窓口で、「相続に使う戸籍謄本を全て発行して欲しい」と言って相 談するといいでしょう。
 また、相続人全員の戸籍謄本も必要になりますので、いっしょに準備しておくとよいでしょう。
 被相続人が、生前に本籍を移転している場合には、ひとつの役所で全ての戸籍謄本を発行してもらうことができないことがありますのでご注意ください。
 なお、相続登記に必要な戸籍謄本などの収集は、司法書士に依頼することもできます。

 
相続財産の大まかな把握(3カ月以内)
 
 相続される財産は、不動産や預貯金、株式などのプラスの財産だけではなく、ローンや税金などのマイナス の財産もあります。
 そして、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合には、家庭裁判所に対し相続放棄の申述をすることができます。
 また、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか不明な場合は、プラスの財産の範囲でのみ責任を負う限定承認の手続きをすることも考えられます。
 これらの手続は、原則として3カ月以内にする必要があります。
 また、生命保険金や死亡弔慰金などは、法律上は相続財産にならない場合がありますが、この時期までに把握しておいた方がいいでしょう。

 
準確定申告(4カ月以内)
 
 事業所得や不動産所得などの所得税の確定申告が必要な人は翌年3月15日までに前年分の所得の確定申告 を行いますが、個人が死亡した場合は、その年の1月1日から死亡の日までの期間の所得を相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に確定申告(準確定申告といいます)をしなければなりません。
 準確定申告が必要な場合は、被相続人が次に該当するような場合です。
 1.生前に個人事業を営んでいた方
 2.生前に不動産を賃貸していた方
 3.生前に不動産の譲渡所得があった方
 4.会社が死亡時点での年末調整を行わなかった役員や従業員であった方
 また、本来は申告の義務はありませんが、多額の医療費があるために申告すれば還付を受けられる場合は、この準確定申告を行う方がいいでしょう。
 
遺産分割の話し合い(10カ月以内を目安に)
 
 相続人の間で相続財産をどのように分配するのか話し合いをします。話し合った結果は書面に残し、遺産分割協議書として、相続人全員の署名・押印をします。この書面は、不動産等の名義変更をする際に必要となります。
 なお、相続税の申告期限内に遺産分割の協議が成立していない場合には、相続税について一部の 控除を受けられないことがあります。
 遺言によって全ての相続財産について相続分の指定がなされている場合は、原則として遺産分割の話し合いをする必要はありませんがが、遺言書で一部の財産についてのみ相続分の指定がなされている場合には、残りの財産について遺産分割の話し合いをする必要があります。
 なお、当事務所においては、遺産分割協議書等の作成を通じて相続手続の支援をしております。

 
相続税の申告(10カ月以内)
 
 被相続人の遺産に対して相続税が発生する場合には、相続人全員が 相続税の申告・納税を10カ月以内に行う必要があります。
 相続税は、それぞれの相続人が実際に取得した財産に対して算出します。相続税を現金納付する場合には10カ月以内に納税しなければなりませんが、その他の納税方法の延納や物納も10カ月以内に申請書を提出し、許可を受ける必要があります。
 
相続登記(期限なし)
 
 相続による不動産の名義変更登記に ついては、期限は定められていません。しかし、相続登記をしないでいると、相続人のうちの誰かが亡くなって権利関係が複雑になったり、相続人の高齢化により手続を行うことができない状態になったりするなどの問題が生じて、相続登記ができなくなる可能性もでてきますので、早めに登記することをお勧めします。

 相続登記を申請すべき期限はいつまでですか

 相続登記は、法律上、申請期限は定められていません。この点、相続放棄の申述が3カ月以内、相続税の申告が10カ月以内と定められているのと異なります。
 しかし、早めに相続登記をしておかないと次のような弊害が生じることがあります。

売却、担保設定等をするには名義変更が必要
  名義変更をしておかないと、その不動産を売却したり、その不動産を担保に入れて融資を受けるなど、その不動産を活用した取引をすることができません。

時間と共に相続関係が複雑になる
 遺産分割協議をせず、名義変更もしないまま放置してしまうと、当初相続人だった方がその後亡くなってさらに相続が発生して、相続関係がどんどん複雑になっていきます。その結果、顔も見たこともない方と遺産分割協議をしなければならなくなります。
  例えば、当初、父が亡くなったために母Aと子供B、C、Dが相続人であったとします。その 後、Bが死亡すると、Bに子供がない場合はBの相続人としての地位をBの妻Eと母Aが引き継ぎます。さらに、その後Eが死亡すると、Eの承継した地位はE の兄弟F、G及び代襲相続人H、Iに引き継がれていきます。
  そうすると、上記の例では、父の相続手続のために、A、C、D、F、G、H、Iが遺産分割協議を行わなければならないことになってしまうわけです。