相続とはどういうことですか


 相続とは、被相続人の死亡により、被相続人の財産上の地位を相続人が受け継ぐことです。亡くなって相続される人を被相続人、生きていて相続する人を相続人といいます。相続する財産の対象は様々で、債権や不動産、退職金、電話加入権、生命保険金、預貯金、株式、現金、自動車などのプラスの財産だけではなく、借金のようなマイナスの財産も引き継ぎます。扶養請求権のような一身専属的な権利義務は、引き継がれません。
 法定相続によって遺産が承継されますが、遺言があれば、遺言の内容に従って遺産が承継されます。 

 


死亡以外で相続が発生することはありますか

 
 死亡以外に、裁判所から失踪宣告を受けた時も、相続は開始します。
 失踪宣告とは、不在者(従来の住所又は居所を去り,容易に戻る見込みのない者)につき、その生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)、又は戦争、船舶 の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき(危難失踪)に、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすることができます。

 失踪宣告の申立てがあると、原則として、申立人や不在者の親族などに対して家庭裁判所調査官が調査を行っているようです。その後、裁判所が定めた期間内(普通失踪は6カ月以上。危難失踪は2カか月以上)に、不在者は生存の届出をするよう、また、不在者の生存を知っている人はその届出をするように官報や裁判所の掲示板で催告をして、その期間内に届出などがなかったときに失踪の宣告がされます。

 失踪宣告があった場合には、戸籍の届出が必要ですので、失踪宣告の審判が確定してから10日以内に市区町村役場に失踪の届出をしなければなりません。
 失踪者が生存していたときには失踪宣告は取り消されますが、取り消し前に当事者双方が善意でした行為は有効で、本人に財産を返還するときは残っている財産について返還することになります。

 

相続放棄、限定承認とはどういうことですか

 
 相続が開始した場合、相続人は次の三つのうちのいずれかを選択できます。
① 相続人が被相続人の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ単純承認
② 相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない相続放棄
③ 被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ限定承認

 そして、相続人が②の相続放棄又は③の限定承認をするには、家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません。なお、限定承認は相続人全員でする必要があります。

 相続放棄をすると、相続放棄をした者は初めから相続人ではなかったことになります。そのため、相続放棄により元々相続人ではなかった者が相続人になることがありますので注意が必要です。

 例えば、被相続人の子供だけが相続人の場合、子供たちが全員相続放棄をすると、子供たちは最初から相続人でなかったことになるため、被相続人の親が相続人になります。

 ところで、相続人となっていても相続財産を受け取らないという場合と、相続放棄した場合とは全く意味が異なります。前者の場合は、プラスの財産は取得しないとしても、被相続人の借金は相続することになります。
 

相続手続の流れについて教えてください


 相続の開始から相続手続の終了まで、どんなことをしなければならなのか、その概要を見ていきたいと思いますが、これからは、お亡くなりになった方を「被相続人」と呼ぶことにいたします。なお、一般的な事例を想定して解説していますので、相続をめぐって紛争になってしまったり、特殊なケースについては解説を省略していることを、あらかじめお断りしておきます。
 

死亡届の提出 (7日以内)
 
 死亡から7日以内には、市区町村役場へ「死亡届」を提出しなければなりません。
 
遺言書の有無の確認(なるべく早く)
 
 死亡届の提出や、お通夜、葬儀などで慌ただしいと思われますが、一段落したら、遺言書があるかどうかを 確認しておきましょう。
  一般的に、よく利用される遺言書は、 被相続人がご自分一人でも作ることができる自筆証書遺言と呼ばれる遺言と、公証人に依頼して作成する公正証書遺言です。遺言書が作成されている場合は、大 事な書類として保管されていることが多いと思われますので、被相続人が生前に重要書類をしまっていた場所を確認してみましょう。
 なお、公正証書遺言が作成されている場合は、公証役場で原本が保管されており、どこの公証役場で誰の遺言書を保管しているのかを検索することもできます。ご自宅などで遺言書が見つからない場合には、お近くの公証役場で検索をしてもらうこともできるわけです。
 遺言書を発見した場合には、封を切らずに、その取扱い方法について、公証人やお近くの司法書士にご相談ください。

 
相続人の確定(1~2カ月を目安に)


 誰が相続人になるのかを確認する必要があります。ご家族の方であれば、誰が相続人になるのかはわかっていると思われますが、これから、不動産の名義変更や預貯金の解約をする度に、戸籍謄本などの公的な書類で、誰が相続人であるのかを証明していく必要があります。そこで、戸籍謄本などを取りそろえておく必要があるわけです。
 一般的には、被相続人の出生から死亡までの間に作られた戸籍謄本が全て必要になりますが、戸 籍は、法律改正やコンピュータ化などの理由により何度か作り替えられていますので、役所の窓口で、「相続に使う戸籍謄本を全て発行して欲しい」と言って相 談するといいでしょう。
 また、相続人全員の戸籍謄本も必要になりますので、いっしょに準備しておくとよいでしょう。
 被相続人が、生前に本籍を移転している場合には、ひとつの役所で全ての戸籍謄本を発行してもらうことができないことがありますのでご注意ください。
 なお、相続登記に必要な戸籍謄本などの収集は、司法書士に依頼することもできます。

 
相続財産の大まかな把握(3カ月以内)
 
 相続される財産は、不動産や預貯金、株式などのプラスの財産だけではなく、ローンや税金などのマイナス の財産もあります。
 そして、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合には、家庭裁判所に対し相続放棄の申述をすることができます。
 また、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか不明な場合は、プラスの財産の範囲でのみ責任を負う限定承認の手続きをすることも考えられます。
 これらの手続は、原則として3カ月以内にする必要があります。
 また、生命保険金や死亡弔慰金などは、法律上は相続財産にならない場合がありますが、この時期までに把握しておいた方がいいでしょう。

 
準確定申告(4カ月以内)
 
 事業所得や不動産所得などの所得税の確定申告が必要な人は翌年3月15日までに前年分の所得の確定申告 を行いますが、個人が死亡した場合は、その年の1月1日から死亡の日までの期間の所得を相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に確定申告(準確定申告といいます)をしなければなりません。
 準確定申告が必要な場合は、被相続人が次に該当するような場合です。
 1.生前に個人事業を営んでいた方
 2.生前に不動産を賃貸していた方
 3.生前に不動産の譲渡所得があった方
 4.会社が死亡時点での年末調整を行わなかった役員や従業員であった方
 また、本来は申告の義務はありませんが、多額の医療費があるために申告すれば還付を受けられる場合は、この準確定申告を行う方がいいでしょう。
 
遺産分割の話し合い(10カ月以内を目安に)
 
 相続人の間で相続財産をどのように分配するのか話し合いをします。話し合った結果は書面に残し、遺産分割協議書として、相続人全員の署名・押印をします。この書面は、不動産等の名義変更をする際に必要となります。
 なお、相続税の申告期限内に遺産分割の協議が成立していない場合には、相続税について一部の 控除を受けられないことがあります。
 遺言によって全ての相続財産について相続分の指定がなされている場合は、原則として遺産分割の話し合いをする必要はありませんがが、遺言書で一部の財産についてのみ相続分の指定がなされている場合には、残りの財産について遺産分割の話し合いをする必要があります。
 なお、当事務所においては、遺産分割協議書等の作成を通じて相続手続の支援をしております。

 
相続税の申告(10カ月以内)
 
 被相続人の遺産に対して相続税が発生する場合には、相続人全員が 相続税の申告・納税を10カ月以内に行う必要があります。
 相続税は、それぞれの相続人が実際に取得した財産に対して算出します。相続税を現金納付する場合には10カ月以内に納税しなければなりませんが、その他の納税方法の延納や物納も10カ月以内に申請書を提出し、許可を受ける必要があります。
 
相続登記(期限なし)
 
 相続による不動産の名義変更登記に ついては、期限は定められていません。しかし、相続登記をしないでいると、相続人のうちの誰かが亡くなって権利関係が複雑になったり、相続人の高齢化により手続を行うことができない状態になったりするなどの問題が生じて、相続登記ができなくなる可能性もでてきますので、早めに登記することをお勧めします。