相続について、こんな相談を受けました
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手続費用についての相談事例

  • 相続手続には費用がどのくらいかかりますか

     相続手続と一口に言っても、相続による不動産の名義変更手続、相続税、相続税を税理士さんに依頼した場合の費用など、様々なものがあります。ここでは、そのうち、金融機関などに提出する相続書類の収集や遺産分割協議書の作成に関する費用と、不動産の名義変更手続について説明します。

    相続書類の収集や遺産分割協議書の作成に関する費用

     全国の役場から必要な戸籍謄本を取り寄せることができます。また、不動産の名義変更や預金の解約などに使用することのできる遺産分割協議書も作成します。事案により、必要な戸籍謄本の数や不動産の調査費用が異なりますが、複雑なケースでなければ、概ね2~5万円程度になると思われます。

    不動産の名義変更手続に関する費用

     相続による不動産の名義変更手続にかかる費用は、①登録免許税、②司法書士費用、③その他の費用の3種類と考えていただければ結構です。

    ①の登録免許税は、登記する際に納付する税金です。相続税がかからない場合でも、不動産の名義変更をする場合には登録免許税を納付する必要があります。税額は、不動産の固定資産評価額(市区町村で発行される固定資産評価証明書に「価格」として掲載されている金額)の0.4%です。

    ②の司法書士費用は、司法書士の報酬と考えていただいて結構です。名義変更する不動産の価格、不動産の個数、どのように名義変更するかなどによって金額が変わります。また、事務所毎に金額も異なります。当事務所の場合も、報酬表を見ただけではよくわからないと思われますので、遠慮なくお問い合わせください。

    ③のその他の費用とは、戸籍謄本の収集、遺産分割協議書の作成等もご依頼される場合に要する費用です。ただし、この費用は、前記の「相続書類の収集や遺産分割協議書の作成に関する費用」と重複する場合は不要となります。

     以上①~③の費用は、ケースにより異なってきます。しかし、名義変更をする不動産が浜松市内外の住宅地のご自宅(土地・建物)であり、相続関係も複雑でなければ、トータルの費用として多くても10万円程度を目安としていただければ十分であると思われます。

  • 相続手続の費用を安く押さえるにはどうすればいいですか

     相続手続の費用を安く押さえるためには、相続手続に必要な書類をなるべくご自分で準備することです。
     相続手続に必要な書類は別のQ&Aを見ていただきたい と思いますが、戸籍謄本などをご自分で取得していただければ、その分は実費だけですみます。しかし、戸籍謄本の取得などもご依頼される場合には、報酬をいただくことになります。
     もっとも、遠隔地の市区町村役場に請求する場合や相続関係が複雑な場合には、戸籍謄本等の取得も司法書士にご依頼いただいた方が、手間と時間を考えると安上がりになることもあるかと思います。
     ご自分でできることは自分でする、面倒なことだけ司法書士に依頼する、ということでもかまいません。

  • 依頼する前に費用を知りたいのですが

     不動産の固定資産評価額がわかれば概算の費用を計算することができます。毎年5月頃、固定資産税の納税通知書が送られてきますが、そこには固定資産評価額が記載されていますので、納税通知書をお持ちいただければおおよその計算をすることができます。
     なお、この段階では、司法書士側で取得すべき書類の明細が不確定であることが多いため、確定額をお知らせすることは難しい場合が多いと思われます。
     私どもといたしましては、費用について、聞かれなくても早い段階で概算額をお知らせするようにしておりますが、ご依頼される前であっても、ご遠慮なくお聞きいただけば結構です。

  • 相続放棄の申述書の作成を依頼した場合、費用はどのくらいかかりますか

     相続人1人につき報酬3万円、実費1000円少々です。なお、相続放棄申述書に添付する戸籍謄本等の取得もご依頼される場合には、別途費用がかかりますのでお尋ねください。

  • 相続税はどのような場合に支払う必要がありますか

     相続税は、被相続人の遺産等について正確な計算をしなければその有無を判断することができませんが、相続税の課税割合は、平成27年1月の相続税法改正後においても全体の約6%と言われています。したがって、10件の相続があってもそのうち課税されている人は1件にも満たないということになります。
     ちなみに、平成27年1月以降に発生した相続については相続税の基礎控除は3000万円であり、法定相続人1人について600万円の控除が認められます。例えば、相続人が配偶者と子供2人の場合の控除額は4800万円ですので、相続した財産の評価額が4800万円以下の場合には相続税は課税されません。
     なお、相続税の正確な計算が必要な場合には、当事務所とネットワークを組んでいる税理士さんをご紹介することもできます。

 

相続に関する一般的な相談事例

  • 相続とはどういうことですか

     相続とは、被相続人の死亡により、被相続人の財産上の地位を相続人が受け継ぐことです。亡くなって相続される人を被相続人、生きていて相続する人を相続人といいます。相続する財産の対象は様々で、債権や不動産、退職金、電話加入権、生命保険金、預貯金、株式、現金、自動車などのプラスの財産だけではなく、借金のようなマイナスの財産も引き継ぎます。扶養請求権のような一身専属的な権利義務は、引き継がれません。
     法定相続によって遺産が承継されますが、遺言があれば、遺言の内容に従って遺産が承継されます。

  • 死亡以外で相続が発生することはありますか

     死亡以外に、裁判所から失踪宣告を受けた時も、相続は開始します。
     失踪宣告とは、不在者(従来の住所又は居所を去り,容易に戻る見込みのない者)につき、その生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)、又は戦争、船舶 の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき(危難失踪)に、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすることができます。

     失踪宣告の申立てがあると、原則として、申立人や不在者の親族などに対して家庭裁判所調査官が調査を行っているようです。その後、裁判所が定めた期間内(普通失踪は6カ月以上。危難失踪は2カか月以上)に、不在者は生存の届出をするよう、また、不在者の生存を知っている人はその届出をするように官報や裁判所の掲示板で催告をして、その期間内に届出などがなかったときに失踪の宣告がされます。

     失踪宣告があった場合には、戸籍の届出が必要ですので、失踪宣告の審判が確定してから10日以内に市区町村役場に失踪の届出をしなければなりません。
     失踪者が生存していたときには失踪宣告は取り消されますが、取り消し前に当事者双方が善意でした行為は有効で、本人に財産を返還するときは残っている財産について返還することになります。

  • 相続放棄、限定承認とはどういうことですか

     相続が開始した場合、相続人は次の三つのうちのいずれかを選択できます。
    ① 相続人が被相続人の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ単純承認
    ② 相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない相続放棄
    ③ 被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ限定承認

     そして、相続人が②の相続放棄又は③の限定承認をするには、家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません。なお、限定承認は相続人全員でする必要があります。

     相続放棄をすると、相続放棄をした者は初めから相続人ではなかったことになります。そのため、相続放棄により元々相続人ではなかった者が相続人になることがありますので注意が必要です。

     例えば、被相続人の子供だけが相続人の場合、子供たちが全員相続放棄をすると、子供たちは最初から相続人でなかったことになるため、被相続人の親が相続人になります。

     ところで、相続人となっていても相続財産を受け取らないという場合と、相続放棄した場合とは全く意味が異なります。前者の場合は、プラスの財産は取得しないとしても、被相続人の借金は相続することになります。

  • 相続手続の流れについて教えてください

     相続の開始から相続手続の終了まで、どんなことをしなければならなのか、その概要を見ていきたいと思いますが、これからは、お亡くなりになった方を「被相続人」と呼ぶことにいたします。なお、一般的な事例を想定して解説していますので、相続をめぐって紛争になってしまったり、特殊なケースについては解説を省略していることを、あらかじめお断りしておきます。

    死亡届の提出 (7日以内)
     
     死亡から7日以内には、市区町村役場へ「死亡届」を提出しなければなりません。
     
    遺言書の有無の確認(なるべく早く)
     
     死亡届の提出や、お通夜、葬儀などで慌ただしいと思われますが、一段落したら、遺言書があるかどうかを 確認しておきましょう。
      一般的に、よく利用される遺言書は、 被相続人がご自分一人でも作ることができる自筆証書遺言と呼ばれる遺言と、公証人に依頼して作成する公正証書遺言です。遺言書が作成されている場合は、大 事な書類として保管されていることが多いと思われますので、被相続人が生前に重要書類をしまっていた場所を確認してみましょう。
     なお、公正証書遺言が作成されている場合は、公証役場で原本が保管されており、どこの公証役場で誰の遺言書を保管しているのかを検索することもできます。ご自宅などで遺言書が見つからない場合には、お近くの公証役場で検索をしてもらうこともできるわけです。
     遺言書を発見した場合には、封を切らずに、その取扱い方法について、公証人やお近くの司法書士にご相談ください。

     
    相続人の確定(1~2カ月を目安に)

     誰が相続人になるのかを確認する必要があります。ご家族の方であれば、誰が相続人になるのかはわかっていると思われますが、これから、不動産の名義変更や預貯金の解約をする度に、戸籍謄本などの公的な書類で、誰が相続人であるのかを証明していく必要があります。そこで、戸籍謄本などを取りそろえておく必要があるわけです。
     一般的には、被相続人の出生から死亡までの間に作られた戸籍謄本が全て必要になりますが、戸 籍は、法律改正やコンピュータ化などの理由により何度か作り替えられていますので、役所の窓口で、「相続に使う戸籍謄本を全て発行して欲しい」と言って相 談するといいでしょう。
     また、相続人全員の戸籍謄本も必要になりますので、いっしょに準備しておくとよいでしょう。
     被相続人が、生前に本籍を移転している場合には、ひとつの役所で全ての戸籍謄本を発行してもらうことができないことがありますのでご注意ください。
     なお、相続登記に必要な戸籍謄本などの収集は、司法書士に依頼することもできます。

     
    相続財産の大まかな把握(3カ月以内)
     
     相続される財産は、不動産や預貯金、株式などのプラスの財産だけではなく、ローンや税金などのマイナス の財産もあります。
     そして、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合には、家庭裁判所に対し相続放棄の申述をすることができます。
     また、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか不明な場合は、プラスの財産の範囲でのみ責任を負う限定承認の手続きをすることも考えられます。
     これらの手続は、原則として3カ月以内にする必要があります。
     また、生命保険金や死亡弔慰金などは、法律上は相続財産にならない場合がありますが、この時期までに把握しておいた方がいいでしょう。

     
    準確定申告(4カ月以内)
     
     事業所得や不動産所得などの所得税の確定申告が必要な人は翌年3月15日までに前年分の所得の確定申告 を行いますが、個人が死亡した場合は、その年の1月1日から死亡の日までの期間の所得を相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に確定申告(準確定申告といいます)をしなければなりません。
     準確定申告が必要な場合は、被相続人が次に該当するような場合です。
     1.生前に個人事業を営んでいた方
     2.生前に不動産を賃貸していた方
     3.生前に不動産の譲渡所得があった方
     4.会社が死亡時点での年末調整を行わなかった役員や従業員であった方
     また、本来は申告の義務はありませんが、多額の医療費があるために申告すれば還付を受けられる場合は、この準確定申告を行う方がいいでしょう。
     
    遺産分割の話し合い(10カ月以内を目安に)
     
     相続人の間で相続財産をどのように分配するのか話し合いをします。話し合った結果は書面に残し、遺産分割協議書として、相続人全員の署名・押印をします。この書面は、不動産等の名義変更をする際に必要となります。
     なお、相続税の申告期限内に遺産分割の協議が成立していない場合には、相続税について一部の 控除を受けられないことがあります。
     遺言によって全ての相続財産について相続分の指定がなされている場合は、原則として遺産分割の話し合いをする必要はありませんがが、遺言書で一部の財産についてのみ相続分の指定がなされている場合には、残りの財産について遺産分割の話し合いをする必要があります。
     なお、当事務所においては、遺産分割協議書等の作成を通じて相続手続の支援をしております。

     
    相続税の申告(10カ月以内)
     
     被相続人の遺産に対して相続税が発生する場合には、相続人全員が 相続税の申告・納税を10カ月以内に行う必要があります。
     相続税は、それぞれの相続人が実際に取得した財産に対して算出します。相続税を現金納付する場合には10カ月以内に納税しなければなりませんが、その他の納税方法の延納や物納も10カ月以内に申請書を提出し、許可を受ける必要があります。
     
    相続登記(期限なし)
     
     相続による不動産の名義変更登記に ついては、期限は定められていません。しかし、相続登記をしないでいると、相続人のうちの誰かが亡くなって権利関係が複雑になったり、相続人の高齢化により手続を行うことができない状態になったりするなどの問題が生じて、相続登記ができなくなる可能性もでてきますので、早めに登記することをお勧めします。

 

相続手続きに必要な書類についての相談事例

  • 相続登記のために準備すべき書類はどのようなものですか

      相続人が配偶者、子又は代襲者の場合について説明しますと次のとおりです。なお、下記の書類のうち、印鑑証明書以外の書類は司法書士に取得を依頼したり、作成を依頼することもできます。
      また、具体的にケースによって、他の書類が必要になる場合もあります。

     (1)被相続人の生れてから亡くなるまでの連続した戸籍
       (除籍、改製原戸籍)謄本
     (2)被相続人の最後の住所が記載された住民票の除票、または戸籍の附票
     (3)相続人の現在の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
     (4)被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合はその子(およびその代襲者)の生れてから亡くなるまでの連続した戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
     (5)相続人全員の印鑑証明書
     (6)相続により不動産を取得する相続人の住民票謄本
     (7)相続財産である不動産の固定資産評価額がわかる評価証明書
     (8)相続財産である不動産の登記事項証明書

  • 戸籍謄本や印鑑証明書に有効期限はありますか

     相続登記に使用する戸籍謄本や印鑑証明書に有効期限はありません。したがって、発行後3か月以上が経過した書類でも問題な く手続ができます。
     相続手続には、こうした不動産登記のほか、銀行預金の解約などの手続きがありますが、それらの手続に必要な書類は相続登記に必要な書類とほぼ同じです。ただし、金融機関によっては、印鑑証明書の有効期限を定めているところも多いと思われますのでご確認ください。

  • 仕事が忙しくて 相続登記に必要な書類を準備できません。すべてを任せることはできますか

     印鑑証明書以外は、当事務所で書類を揃えることが可能です。ただし、手続的にどんな簡単な相続手続であっても、最低1度は直接お会いしてお話を聞かせて下さい。その際に、誰がどのように書類収集をするかを話し合いながら決めていきたいと思います。
     お会いする時間は所定時間外でもかまいません。あらかじめ電話等で予約した上でご来所ください。その場合には、お手元に戸籍謄本、固定資産額評価証明書等があれば、ご持参ください。

  • 戸籍謄本はどこに請求すればいいですか

     戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に請求します。遠隔地の場合には郵便でも請求することができます。その場合は、費用は定額小為替で支払います。本籍を転籍している方は、転籍前の戸籍謄本は転籍前の本籍地の市区町村役場に請求することになります。

 

法定相続情報証明制度についての相談事例

  • 法定相続情報証明制度とは何ですか

    「法定相続情報証明制度」とは、一言で言うと、登記所(法務局)に戸除籍謄本等の束とともに相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出し、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを交付する制度です。

     これまで、相続に関する様々な名義変更手続きや預貯金の解約をするには、その都度、戸除籍謄本等の束を提出して相続人を確定する作業を各機関で個別に行っていました。
     しかし、この作業には、戸籍を読み解く専門的な知識が必要であり、大変な時間と労力が必要でした。

    原稿

     法定相続情報証明制度は、登記所(法務局)に戸除籍謄本等の束とともに相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出し、その内容を登記官が確認して証明することにより、法定相続人がこの証明書一枚で明らかとなります。

    新制度
     したがって、様々な相続手続きや預貯金の解約の際に法定相続情報一覧図の写しを利用することにより、戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなるととも、手続きもスピーディに行うことができます。

 

相続登記についての相談事例

  • 相続手続の流れについて教えてください

     相続の開始から相続手続の終了まで、どんなことをしなければならなのか、その概要を見ていきたいと思いますが、これからは、お亡くなりになった方を「被相続人」と呼ぶことにいたします。なお、一般的な事例を想定して解説していますので、相続をめぐって紛争になってしまったり、特殊なケースについては解説を省略していることを、あらかじめお断りしておきます。

    死亡届の提出 (7日以内)
     
     死亡から7日以内には、市区町村役場へ「死亡届」を提出しなければなりません。
     
    遺言書の有無の確認(なるべく早く)
     
     死亡届の提出や、お通夜、葬儀などで慌ただしいと思われますが、一段落したら、遺言書があるかどうかを 確認しておきましょう。
      一般的に、よく利用される遺言書は、 被相続人がご自分一人でも作ることができる自筆証書遺言と呼ばれる遺言と、公証人に依頼して作成する公正証書遺言です。遺言書が作成されている場合は、大 事な書類として保管されていることが多いと思われますので、被相続人が生前に重要書類をしまっていた場所を確認してみましょう。
     なお、公正証書遺言が作成されている場合は、公証役場で原本が保管されており、どこの公証役場で誰の遺言書を保管しているのかを検索することもできます。ご自宅などで遺言書が見つからない場合には、お近くの公証役場で検索をしてもらうこともできるわけです。
     遺言書を発見した場合には、封を切らずに、その取扱い方法について、公証人やお近くの司法書士にご相談ください。

     
    相続人の確定(1~2カ月を目安に)

     誰が相続人になるのかを確認する必要があります。ご家族の方であれば、誰が相続人になるのかはわかっていると思われますが、これから、不動産の名義変更や預貯金の解約をする度に、戸籍謄本などの公的な書類で、誰が相続人であるのかを証明していく必要があります。そこで、戸籍謄本などを取りそろえておく必要があるわけです。
     一般的には、被相続人の出生から死亡までの間に作られた戸籍謄本が全て必要になりますが、戸 籍は、法律改正やコンピュータ化などの理由により何度か作り替えられていますので、役所の窓口で、「相続に使う戸籍謄本を全て発行して欲しい」と言って相 談するといいでしょう。
     また、相続人全員の戸籍謄本も必要になりますので、いっしょに準備しておくとよいでしょう。
     被相続人が、生前に本籍を移転している場合には、ひとつの役所で全ての戸籍謄本を発行してもらうことができないことがありますのでご注意ください。
     なお、相続登記に必要な戸籍謄本などの収集は、司法書士に依頼することもできます。

     
    相続財産の大まかな把握(3カ月以内)
     
     相続される財産は、不動産や預貯金、株式などのプラスの財産だけではなく、ローンや税金などのマイナス の財産もあります。
     そして、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合には、家庭裁判所に対し相続放棄の申述をすることができます。
     また、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか不明な場合は、プラスの財産の範囲でのみ責任を負う限定承認の手続きをすることも考えられます。
     これらの手続は、原則として3カ月以内にする必要があります。
     また、生命保険金や死亡弔慰金などは、法律上は相続財産にならない場合がありますが、この時期までに把握しておいた方がいいでしょう。

     
    準確定申告(4カ月以内)
     
     事業所得や不動産所得などの所得税の確定申告が必要な人は翌年3月15日までに前年分の所得の確定申告 を行いますが、個人が死亡した場合は、その年の1月1日から死亡の日までの期間の所得を相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に確定申告(準確定申告といいます)をしなければなりません。
     準確定申告が必要な場合は、被相続人が次に該当するような場合です。
     1.生前に個人事業を営んでいた方
     2.生前に不動産を賃貸していた方
     3.生前に不動産の譲渡所得があった方
     4.会社が死亡時点での年末調整を行わなかった役員や従業員であった方
     また、本来は申告の義務はありませんが、多額の医療費があるために申告すれば還付を受けられる場合は、この準確定申告を行う方がいいでしょう。
     
    遺産分割の話し合い(10カ月以内を目安に)
     
     相続人の間で相続財産をどのように分配するのか話し合いをします。話し合った結果は書面に残し、遺産分割協議書として、相続人全員の署名・押印をします。この書面は、不動産等の名義変更をする際に必要となります。
     なお、相続税の申告期限内に遺産分割の協議が成立していない場合には、相続税について一部の 控除を受けられないことがあります。
     遺言によって全ての相続財産について相続分の指定がなされている場合は、原則として遺産分割の話し合いをする必要はありませんがが、遺言書で一部の財産についてのみ相続分の指定がなされている場合には、残りの財産について遺産分割の話し合いをする必要があります。
     なお、当事務所においては、遺産分割協議書等の作成を通じて相続手続の支援をしております。

     
    相続税の申告(10カ月以内)
     
     被相続人の遺産に対して相続税が発生する場合には、相続人全員が 相続税の申告・納税を10カ月以内に行う必要があります。
     相続税は、それぞれの相続人が実際に取得した財産に対して算出します。相続税を現金納付する場合には10カ月以内に納税しなければなりませんが、その他の納税方法の延納や物納も10カ月以内に申請書を提出し、許可を受ける必要があります。
     
    相続登記(期限なし)
     
     相続による不動産の名義変更登記に ついては、期限は定められていません。しかし、相続登記をしないでいると、相続人のうちの誰かが亡くなって権利関係が複雑になったり、相続人の高齢化により手続を行うことができない状態になったりするなどの問題が生じて、相続登記ができなくなる可能性もでてきますので、早めに登記することをお勧めします。

  • 相続登記を申請すべき期限はいつまでですか

     相続登記は、法律上、申請期限は定められていません。この点、相続放棄の申述が3カ月以内、相続税の申告が10カ月以内と定められているのと異なります。
     しかし、早めに相続登記をしておかないと次のような弊害が生じることがあります。

    売却、担保設定等をするには名義変更が必要
      名義変更をしておかないと、その不動産を売却したり、その不動産を担保に入れて融資を受けるなど、その不動産を活用した取引をすることができません。

    時間と共に相続関係が複雑になる
     遺産分割協議をせず、名義変更もしないまま放置してしまうと、当初相続人だった方がその後亡くなってさらに相続が発生して、相続関係がどんどん複雑になっていきます。その結果、顔も見たこともない方と遺産分割協議をしなければならなくなります。
      例えば、当初、父が亡くなったために母Aと子供B、C、Dが相続人であったとします。その 後、Bが死亡すると、Bに子供がない場合はBの相続人としての地位をBの妻Eと母Aが引き継ぎます。さらに、その後Eが死亡すると、Eの承継した地位はE の兄弟F、G及び代襲相続人H、Iに引き継がれていきます。
      そうすると、上記の例では、父の相続手続のために、A、C、D、F、G、H、Iが遺産分割協議を行わなければならないことになってしまうわけです。

 

誰が相続人になるかについての相談事例

  • 法定相続人と法定相続分を教えてください

      相続人が誰になるか、また、相続人の中で誰がどの程度の相続分があるかは民法で定められています。

     被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者はどんな場合でも相続人になります。相続開始時に配偶者であれば、その後再婚しても相続権は失いません。相続開始時に配偶者でなかった過去の配偶者、たとえば前妻には相続権はありません。

     被相続人に子供がいた場合は、子と配偶者が相続人になります。配偶者が死亡していれば子供だけが相続人になります。被相続人に子供がいなければ、被相続人の父母と配偶者が相続人になります。配偶者が死亡していれば父母だけが相続人になります。
     相続人に子供がいなくて父母が死亡している場合は、被相続人の兄弟姉妹と配偶者が相続人になります。配偶者が死亡していれば兄弟姉妹だけが相続人になります。

     子供のうち、婚姻外で生まれた子供は非嫡出子と言われています。父との親子関係は認知があって初めて生じますが、認知があっても非嫡出子の相続分は結婚している男女間で生まれた嫡出子の2分の1です。

     養子は血族ではありませんが、法律上は血族と同様に扱われ、嫡出子の身分を取得します。これを法定血族といいます。養子にもらった子は実子と同じく相続人になります。養子は原則として、養親と実親の両方を相続します。つまり、養子に出した子も他の実子と同じように相続権者になります。

     胎児は、相続に関してはすでに生まれたものとみなし、死産の場合には例外的に生まれたものとみなさないということになります。胎児以外の相続人は胎児を参加させずに遺産分割をできるものの、胎児が生まれた場合には遺産分割は無効になり、分割をやり直すことになります。

     法定相続分についても、誰が相続人になるかによって変わります。
     配偶者と子がいる場合は、配偶者と子がそれぞれ2分の1ずつ相続します。配偶者が死亡していれば子が全部相続します。配偶者と親がいる場合には、配偶者が3分の2で親が3分の1をそれぞれ相続します。

     配偶者が死亡していれば親が全部相続します。配偶者と兄弟姉妹がいる場合には、配偶者が4分の3で兄弟姉妹が4分の1をそれぞれ相続します。配偶者が死亡していれば兄弟姉妹が全部相続します。子や親、兄弟姉妹が数人いるときは、人数で等分します。

  • 代襲相続人とは何ですか

     被相続人の死亡の前に相続人がすでに死亡や廃除・欠格によって相続人ではなくなっている時に、その子が親に代わって相続することを、代襲相続といいます。直系卑族の場合は子の次に孫、孫の次にひ孫と、永遠に再代襲相続します。

     直系尊属には代襲相続は起こりません。兄弟姉妹が亡くなっている場合は、甥や姪に代襲相続しますが、甥や姪も亡くなっている場合は、再代襲はしません。これはあまりにも縁遠い人間に相続させないためといわれています。

     死亡や廃除、欠格ではなく相続放棄の場合は、相続放棄をした相続人の直系卑族には代襲相続は起きません。 代襲相続によっては、予想外に相続人の範囲が広くなることがありますので注意が必要です。

  • 相続人であっても相続を受ける資格がない場合があると聞きましたが

     法定相続人でも相続欠格や廃除になった場合には、相続も遺贈も受けられません。欠格事由は相続について一定の罪を犯した場合に該当します。

     欠格事由の具体例は、故意に被相続人や先順位や同順位の相続人を死亡させたり、させようとしたりしたことを原因として刑に処せられた者、被相続人が殺されたことを知りながら告訴告発をしなかった者、詐欺・強迫によって被相続人が相続に関する遺言をしたことを取り消し変更することを妨げた者、詐欺・強迫によって被相続人に相続に関する遺言をさせるなどした者、被相続人の遺言を偽造・変造・破棄・隠匿した者です。これらの欠格事由に該当すると、当然に相続権を失い、遺贈を受ける権利も失います。

     廃除事由は被相続人に対し生前、虐待、侮辱または著しい非行があり家庭裁判所が申し立てを認めた場合です。被相続人が生前に家庭裁判所に申し立てるか、遺言で意思表示をして相続開始後に遺言執行者が家庭裁判所に申し立てる場合があります。相続廃除は事後的に取り消すこともできます。

     欠格や廃除となった場合でも、その子は代襲相続できます。これを避けるためには、遺言で相続させずに最低限の遺留分を渡すにとどめるか、生前贈与などによって財産を処分するかのどちらかです。

  • 相続人がいない場合、財産はどうなるのですか

      遺言もなく相続人もいない場合は、利害関係人や検察官の申し立てによって家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。法定相続人がいない場合というのは、 相続人全員が相続放棄をした場合も含みます。

     相続財産管理人は財政状況の報告などの相続財産管理をし、債権者や受遺者に対する請求催告、不明の相続人の探索を行います。相続人捜索の公告の後6か月を経過しても相続人が現れない場合は相続人不在が確定します。

     相続人不在が確定すると、相続人、管理人に知られなかった債権者・受遺者はともにその権利を失います。 相続人がいないと確定した場合、被相続人の特別縁故者は家庭裁判所に申し立てをし、財産の全部または一部の分与を受けることができます。

     特別縁故者とは被相続人と生計を共にしていた人や、被相続人の療養看護に努めた人などがあたります。相続人、債権者、受遺者、特別縁故者いずれもいない場合は、被相続人の財産は原則として国庫に帰属します。

  • 内縁の妻にも一定の権利があると聞いたのですが

     実質的に夫婦関係にある場合でも、婚姻届を提出していない関係を「内縁関係」といいます。 内縁関係の場合、法律上の夫婦と違い、お互いが相続人となりません。つまりお互いの財産について一切の相続権が発生しないことになります。

     内縁の配偶者といえるためには、内縁に必要とされる婚姻意思および夫婦共同生活の実態の存在が必要です。夫婦別姓などの理由で婚姻届を出さずに事実婚を続ける場合、従来の内縁とは区別され、内縁と同様の法的保護が与えられるかどうかは未知数です。

     このように、社会的には夫婦としての実態を備え、夫婦共同生活を送っているにも関わらず、何らの保護も与えないのは妥当でないという考えから、内縁関係を法律上の夫婦に準ずる関係として、内縁の配偶者に対して法律上の保護がなされる場合があります。

     たとえば、判例では、内縁の配偶者の居住する建物に対する居住の保護について、非居住相続人からの明け渡し請求を権利の濫用として排斥し、家主からの明 け渡し請求を相続人の賃借権を援用して排斥しました。相続人がいない場合は、借地借家法36条によって、内縁の妻の借家権の継承が認められています。

     祭祀財産の承継については、被相続人の指定が優先するので、被相続人の指定があれば生存内縁配偶者が祭祀主催者となります。被相続人の指定がない場合でも、被相続人と生計を異にしていた相続人ではなく、内縁の妻が祭祀主催者とされたとされた事例もあります。

     これらのほか、健康保険の保険給付(健康保険法3条7項)、厚生年金保険の遺族厚生年金(厚生年金保険法3条2項)、労働災害の遺族補償年金(労働者災 害補償保険法16条の2第1項)、公営住宅の入居者資格(公営住宅法23条1項)、育児・介護休業の申出や深夜業の規制(育児介護2条4項)などがあります。

     このように内縁関係者に対して保護がされつつあるものの、完全ではありませんので、内縁関係にある者が自分の死後にパートナーに財産を残したい場合には、生前贈与や遺贈により借地上の建物を内縁の妻名義にしておく必要があります。

  • 事実婚のパートナーに相続権はありますか

     婚姻届を提出していない事実婚の場合には、配偶者が亡くなった場合には、遺言を残していない限り、法律上の相続人でない事実婚のパートナーは相続できません。

    不動産や会社の名義が死亡した配偶者になっていて、遺言も残していない場合は、すべて配偶者の相続人のものになります。

     こうした場合にも出資を証明して持分を主張することは可能です。銀行預金も、実質的にお金を出した人間が預金債権者ですので、亡くなられた名義の預金通帳があるが実はお金を出したのは自分であるという方は、それを証明して権利を主張することになります。

  • だれが相続人になるのですか

     だれが相続人になるかは次のとおり定められています(簡略に説明するために、相続放棄、廃除等があった場合を除いて説明しています)。

    ●配偶者(妻または夫)  常に相続人となる
     (注)内縁関係にある配偶者は相続権なし

    ●配偶者以外

     第1順位  子があるときは子
     (注)子が死亡している場合はその子の子孫
     ( 養子を含む。非嫡出子(ひちゃくしゅつし、婚姻関係にない男女から生まれた子)も認知されていれば相続権がある)   
            
     第2順位  父母
     (注)父母が死亡している場合は祖父母等直系尊属

     第3順位  兄弟姉妹
     (注)兄弟姉妹が死亡している場合はその子

  • 養子も相続人になりますか

     養子も実子と同じように相続人となります。実際に養子となっているかどうかは亡くなった人とその相続人の戸籍等を調査して確認してください。
    「養子に入った」と思っていても、実際には、法律上の養子縁組の手続きがとられておらず、相続人にはなれないというケースもまま見られます。

  • 被相続人の前妻または前夫に相続の権利はありますか

    相続の権利はありません。配偶者については、亡くなった当時の配偶者 (妻または夫)のみが相続人です。

  • 被相続人の配偶者の連れ子に相続の権利はありますか

     亡くなった当時の配偶者の連れ子には相続の権利はありません。ただし、連れ子であっても被相続人と養子縁組をしていた場合は相続人となります。

  • 被相続人には子供が2人いましたが、そのうち1人は既に亡くなっており、配偶者と子供がいます。この場合、誰が相続人になりますか

     被相続人の子供で生存されている方(法定相続分2分の1)、亡くなられた子供の子(被相続人から見ると孫。法定相続分2分の1。複数いらっしゃる場合は法定相続分は2分の1を均等に分割)です。亡くなられた子供の配偶者は相続人にはなりません。

  • 被相続人には子供が2人いましたが、遺産分割協議をする前にそのうち1人が亡くなってしまいました。その方には、配偶者と子供がいます。この場合、誰が相続人になりますか

      相続人はあくまでも子供2人です。しかし、遺産分割協議をする前に亡くなられた方と協議をすることはできませんので、亡くなられた方の権利義務を引き継いだ(つまり、亡くなられた方の相続人である)配偶者と子供(被相続人から見ると孫)が遺産分割協議に参加することになります。

  • 夫が死亡しました。現在、妊娠中ですがお腹の中の子供には相続権はありますか

    相続については、胎児は既に生まれた者とみなされますのでお腹の中のお子さんにも相続権があります。

  • 他家に養子に行った者も実親の相続人になることができますか

     民法上、養子には普通養子と特別養子の2種類あります。普通養子の場合は、実の親および実方の親族関係は一切影響しません。したがって実親の財産を相続することができます。
     これに対し特別養子の場合は、実方の親および実方の血族との関係は終了します。したがって実親からの財産は相続できません。
     大人になってから他家に養子に行ったのであれば普通養子であると思われますので、実親の相続人でもあります。

  • 母の両親(自分から見て祖父母)と養子縁組することになりました。相続関係はどうなりますか

     祖父母双方と縁組縁組をし、かつ両親とも存命という前提ですと、祖父母・両親すべての相続人になります。
     また、お母様が死亡した後に祖父母が死亡した場合には、「祖父母の子としての立場」と「母の代襲相続人としての立場」を併せ持つことになります。

 

相続財産や相続債務についての相談事例

  • どんなものが相続財産になりますか

      相続財産といっても、プラスの財産とマイナスの財産(債務)とがあります。プラスの財産の例示としては、現金、預金、土地、建物、賃借権(借地権)、有価証券、債権、自動車、ゴルフ会員権、貴金属、美術骨董品、著作権、特許権などです。

  • 預金や現金はどのように相続されますか

      銀行などの預貯金は口座名義人の相続の発生により凍結され、一定の手続きを行わないと預金の解約ができません。

     ところで、最判平成16年4月20日は、預貯金などの金銭債権は、相続開始と同時に当然に分割され、各相続人に法定相続分に応じて帰属すると判示していました。そのため、遺産分割を待つまでもなく法定相続分に応じた払戻し請求をすることが法的には可能でした。

     ところが、平成28年12月19日、最高裁は、「預貯金は遺産分割の対象とならない」としてきた判例を見直し、「対象になる」とする初判断を示しました。これにより、預貯金を解約するためには誰が相続するのかが、遺産分割協議書や同意書などにより明確になっていなければ、原則として応じていないのが実情です。

    銀行が相続紛争に巻き込まれたくないと考えるのは仕方ないかもしれないが、最高裁判例が出ているのであるから判例にしたがった取扱いをする方が紛争に巻き込まれる可能性は低いと考えられますが、銀行の取扱いは変わっていません。

     なお、預貯金ではなく、現金については、最判平成4年4月10日は、「現金は、被相続人の死亡により他の動産、不動産とともに相続人らの共有財産となるから、遺産分割をせずに法定相続分に応じた金員の引き渡しを求めることはできない」という趣旨の判断をしています。

  • 借地権・借家権についても相続することができますか

     借地上の建物や借家に住んでいる相続人は借地権や借家権の名義人が亡くなった場合には、借地契約・借家契約をそのまま相続することができます。そこで、借地名義人や借家名義人の変更を申し出ることができます。その際、戸籍謄本など相続関係が明かとなる書類を求められることもあります。
     なお、相続により借地権や借家権を承継した場合には、名義書換料を支払う必要はありません。

  • 田、畑などの農地を相続するには農地法の許可が必要ですか

     農家で、相続財産のほとんどが農地の場合には、農家を継ぐ相続人が単独で農地を相続することが多いようです。
     農地の所有権移転には、原則として農地法に定める許可が必要ですが、遺産分割により農地を取得する場合には許可は不要とされています。しかし、遺産分割により取得した農地を第三者に売却する場合や宅地などに変更する場合には、農地法の許可が必要となります。

  • 事業を相続するには、具体的にどのような手続をとればいいですか

     被相続人が事業を営んでいた場合、事業を承継する相続人は種々の手続が必要になります。被相続人の事業が会社組織である場合には、一般的には株式を相続することになります。零細企業では株主総会を備え置いていない場合も多いと思われますが、株式の名義書換手続をする必要があります。また、被相続人が会社 の代表者であった場合には、新たな代表者を定めて変更登記をし、さらに、金融機関の預金口座などの代表者変更手続をしておく必要があります。特に、手形や 小切手を使用している会社では、早めに手続をして、新しい手形帳、小切手帳を発行してもらう必要があります。
     さらに、被相続人が会社の借入金の保証人になっていた場合には、保証人の地位や保証債務も相続の対象となりますので、早めに金融機関と協議する必要があります。
     被相続人が個人事業の場合には、金融機関の借入金そのものを相続することになりますので、金融機関と早めに協議する必要があります。

  • 預貯金の相続手続はどのようにすればいいですか

     金融機関では、預金者が死亡したことを知った場合には、原則として預金を凍結し、入金や借金ができないようにします。本来、預金者が死亡した場合には預金者はこの世に存在しない筈ですから入出金はできない筈です。ですから、仮に、金融機関が預金者の死亡を知っていながら入出金に応じてしまうと、金融機関に法的な責任が生じる可能性があります。そのために、預金者が死亡したことを知った場合には預金を凍結してしまうのです。

     では、金融機関がどのようにして預金者の死亡を知るのでしょうか。預金者が著名人であれば報道により知ることもあるでしょうが、通常は、新聞に掲載された訃報、金融機関の取引先である企業からの情報、相続人からの申し出などにより知ることが多いようです。

     さて、こうして預金が凍結されてしまうと、被相続人の預金から出金して葬儀費用や入院費用などを支払おうと考えていた相続人が、預金を引き出せないことになります。

     また、平成28年に出された最高裁判決が、預貯金は遺産分割の対象となると判断したため、一部の相続人が「自分の法定相続分に相当する金額だけを出金して欲しい」と金融機関に掛け合っても、おそらく、応じる金融機関はないものと思われます。

     では、どのようにしたら被相続人の預貯金を解約することができるかですが、概ね、次のような書類を整える必要があります。

    ・金融機関で準備している預貯金名義書換依頼書

    ・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

    ・相続人全員の戸籍謄本

    ・相続人全員の印鑑証明書

    ・遺産分割協議書

    ・被相続人名義の通帳

     つまり、相続人全員の合意により、その預貯金を誰が相続することになったのかが明らかとなる書類の提出が求められるのです。

    また、戸籍に代えて、法定相続情報一覧図の写しの提出を求められる可能性もあります。

  • 死亡退職金は誰が貰うことになりますか

     死亡退職金の受給権者は、普通の場合、法律や会社の退職金規定などで定められています。
     受給権者が法律や内規等で定められている場合には、受取人は相続人としてではなく、固有の権利として死亡退職金を受け取るものと解されています。
     他方、こうした規定がない場合には、相続財産となるか受取人の固有財産となるかは、個々のケースによる判断となりますが、審判例は相続財産とする例が多いようです。

     実際に次のようなケースがありました。

     亡くなられたのは会社の創業者であり、死亡時は取締役会長でした。
     役員退職金規程では、弔慰金と退職慰労金が定められていました。
     まず、弔慰金については株主総会等の承認等の手続きがなく、金額的も在任年年数に関係なく儀礼の範囲の金額が定められていました。したがって、この弔慰金は、喪主に対する贈与という趣旨であると考えられ、法律上の相続財産には含まれないと思われます。
     
     次に、退職慰労金ですが、こちらは役員在任年数に応じて計算するという計算式は定められていましたが、役員が死亡している場合に誰が受け取るかという規程はありませんでした。退職の事実が発生し、その後に役員が死亡したのであれば相続財産であることは間違いなく、相続財産として処理しなければなりません。しかし、今回のように在職中に死亡された場合は説は分かれているようです。しかしながら、実務的には、説が分かれている場合には最高裁判例にしたがえばよいと考えます。
     
     最高裁判例は、死亡退職金の支給規程のない財団法人において理事長の死亡後同人の妻に支給する旨の決定をして支払われた死亡退職金は、特段の事情のない限り、相続財産に属するものではないとしています(昭和62年3月3日最高裁判所第3小法廷判決/昭和59年(オ)第504号(最高裁判所裁判集民事150号305頁))。 
     
     この判例は「財団法人」の例ですが、受取人の指定が規定されていなかったという意味では今回のケースと同様であると考えられますから、相続財産ではないということでよいと思います。

     なお、相続税の計算においては「みなし相続財産」として計算する必要があるかと思いますので税理士さんに判断してもらうとよいでしょう。

  • 債務はどのように相続されるのですか

     債務が承継される場合には、原則として、可分債務については法定相続分にしたがって相続人に分割承継されます。ただし、相続により相続人に承継される債務と、承継されない債務があります。

     承継されない債務には次のようなものがあります。

    ① 一身専属性のある債務
      たとえば、芸術家に作品の制作を依頼していた場合、その芸術家は作品を制作する債務を負っていますが、その性質上、その芸術家でなければなしえない債務であるから相続により承継されません。
      また、身元保証契約にもとづく保証債務(「身元保証に関する法律」参照)についても、身元保証契約が個人的信頼関係にもとづいて存続するものであるから一身専属的な債務とされ、特別な事情がない限り相続性は否定されています。

    ② 限度額・期間の定めのない包括根保証契約
      最判昭和37年11月9日は、限度額・期間の定めのない包括根保証契約については、被相続人の死亡後

    に生じた債務についての責任を否定しました。したがって、被相続人死亡時における債務残高は相続人に承継

    されますが、保証人としての地位までも相続されるわけではないことが明かとなりました。
      なお、限度額・期間の定めのあるものについては、一般論として相続性が認められています。したがって、被相続人死亡時の保証残高が法定相続分にしたがって承継されるとともに、保証人としての地位も承継されます。なお、法定相続分にしたがって保証割合が定まることとなります。
      ただし、民法465条の4により、貸金等根保証契約(債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務が含まれるもの)については、保証人が死亡したときは債務の元本が確定するため、被相続人死亡後に発生した債務を保証人の相続人が保証責任を負うことはありません。

     (貸金等根保証契約の元本の確定事由)
     民法第465条の4  次に掲げる場合には、貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。
     一  債権者が、主たる債務者又は保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。ただし、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
     二  主たる債務者又は保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
     三  主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

      なお、相続人間の遺産分割協議で、特定の相続人がある債務を相続するように合意したりすることがありますが、これは、相続人間での内部負担割合の指定、あるいは一種の免責的債務引受にすぎず、債権者に対しては当然には効力を生じません。

  • 相続債務にはどんなものが考えられますか

     住宅ローン、借金、借入金、買掛金、未払い税金、未払い医療費、未払い家賃などです。

  • 会社を経営していた父が事業資金の借り入れについて連帯保証人になっていました。会社は長男が引き継ぎますが、連帯保証についてはどうなるでしょうか

     お父様の連帯保証人としても地位は、相続人全員に、法定相続分にしたがって相続されます。相続人全員で「長男が承継する」と定めても、債権者である金融機関がそれを承諾しなければ法定相続人全員に承継されてしまうのです。
     このような場合、金融機関の現実的な対応としては、法定相続人全員に承継された保証債務を免責的に長男が引き受けたり、あらためて長男と連帯保証契約を締結するなどの方法がとられます。

  • 生命保険金は相続財産になりますか

      被相続人が自己を被保険者として生命保険に加入していた場合、その生命保険金が相続財産となるのか否かは、保険金受取人としてどのような指定をしていたかによります。そして、生命保険金が相続財産となる場合には遺産分割の対象となりますが、生命保険金が相続財産にならない場合には遺産分割の対象とする必要はありません。

    ●受取人が被相続人自身の場合
      この場合は、生命保険金が一旦被相続人に帰属すると考えられますので、相続財産として遺産分割の対象になるとも考えられるます。しかし、ほとんどの場合、生命保険約款の解釈により受取人が定められることになりますから、実際には相続財産とはならずに相続人固有の財産となります。

    ●受取人が「相続人」と指定されていた場合
      被相続人が死亡したときの相続人となるべき者を受取人にしたと考えられますから、生命保険金は相続財産ではなく、相続人固有の財産となります。そして、相続人が法定相続分の割合にしたがって保険金請求権を有することとなります。

    ●受取人が相続人の中の特定の者と指定されていた場合
     この場合も生命保険金は相続財産にはならず、指定された受取人の固有の財産になります。

     以上のとおり、ほとんどの場合において生命保険金は相続財産にはなりません。

     一方で、生命保険金は遺留分減殺の対象になるかという問題があります。つまり、生命保険金の掛金である保険料を、実質的には被相続人が支払ってきたのであれば、被相続人が受取人に対し財産を無償で贈与したのと同一視できるため、遺留分減殺の対象にすることができるという見解があるのです。
     しかし、そのように考えると、一方で生命保険金が相続財産を構成しない場合であっても、遺留分減殺の場面では相続財産的な扱いをするということになってしまいます。

     この点について、最高裁は、平成14年、生命保険金が相続財産にならない場合には遺留分減殺の対象にもならないと判断し、この議論に決着がつきました。

  • 遺産分割協議を前提とする遺産の評価はいつの時点で行うのでしょうか

     遺産分割をする前提として、個々の分割額を算出するにあたって遺産を評価する必要がありますが、いつの時点で評価するか、という問題があります。

     通説は、二段階に分けて評価するという考え方です。
     まず、第一段階は、相続開始時における評価です。
     たとえば、相続人が配偶者と子供二人という前提で、相続財産の評価が1000万円、配偶者の特別受益200万円と評価されると、配偶者の相続分は 1000分の400、子の相続分はそれぞれ1000分の300ということになります。
      なぜなら、配偶者の相続分は、相続財産+みなし相続財産の1200万円の2分の1であるから600万円ですが、特別受益は既に受領していますから、相続財産1000万円に対しては400万円の相続分を有するにすぎません。
      このように、第一段階の評価の目的は、相続人の相続分を算出するために行う評価です。

      第二段階は、遺産分割時における評価です。
      たとえば、相続開始後10年後に、ようやく遺産分割の話し合いが行われたとします。相続財産のうち、不動産については相続開始の時より価値が大幅に下落していたような場合には、遺産分割時点において再度評価をしたうえで、第一段階で算出した相続分にしたがって分割を行った方が公平であるということになります。

      しかし、第一段階での評価を基準にして遺産分割を行ったとしても不公平にならない場合(相続の開始から遺産分割までの期間が短期間であるような場合)は、第一段階の評価=第二段階の評価となりますから、実質的には第一段階の評価にしたがって具体的な相続分を算出することになるでしょう。

 

遺産分割についての相談事例

  • 遺産分割の方法にはどんなものがありますか

      遺産分割を行う方法としては、遺言による分割、協議による分割、調停による分割、審判による分割の4つがあります。 また、遺産分割の内容として、現物分割、換価分割、代償分割の概念があります。

      まず、遺言による分割、協議による分割、調停による分割、審判による分割について説明しましょう。

      遺言がある場合は、遺産分割は原則として遺言書のとおりに行います。 遺言がない場合は相続人間で話し合って、遺産分割をします。これが協議による分割です。
      話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てます。調停による分割申し立てを行う裁判所は相手方の住所地の家庭裁判所が管轄裁判所になります。審判の場合は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てることになっています。

     次に、現物分割、換価分割、代償分割について説明します。
     現物分割は、遺産分割の方法としては、最も原則的な分割方法です。遺産分割は、相続財産全体に対する共同相続人の共有状態を解消する手続きであることから、個々の財産について、その相続取得者をそれぞれ決定するのが現物分割です。

     遺産の価額が、土地のように分割が困難な財産に集中しているような場合で、その財産を処分して換価することが可能なときに、その財産を第三者に譲渡してその代金を相続人間で分配する方法を換価分割といいます。

     また、換価分割と同様に、遺産の価額が土地のように分割が困難な特定の財産に集中している場合で、その財産 を容易には換価することができないときや、相続人が、換価しないで所持を希望するときは、その財産を取得する者が他の相続人に対して代償金を支払う方法を とることがあります。これを代償分割といいます。

  • 遺産分割協議は持ち回りで作成することもできるのですか

      遺産分割協議で定める分割の内容は、話し合いで全員が納得すればどのように定めても結構です。もちろん、法定相続分と異なる分割をしても結構です。話し合いで合意に達すれば遺産分割協議書を作成します。

      話し合いは相続人全員が一同に会して行うのが通常ですが、書面や持ち回りでもすることができます。協議は相続人全員の合意にり成立します。したがって、多数決では成立しません。また、一部の相続人である者を除いた分割協議は無効です。

      相続人の中に未成年者がいる場合には、未成年者に代わって法定代理人(親権者等)が協議に参加しますが、。法定代理人である親権者自身も相続人である場合には、家庭裁判所で特別代理人を選任する必要があります。

      話し合いで合意ができない場合には、家庭裁判所に調停・審判を申し立てることになります。

  • 遺産分割をする際、生前のなされた贈与はどのように考えればいいですか

     遺産分割は、共同相続人間で法定相続分に従って行うのが原則です。しかし、相続人のうち一部の者が被相続人から遺贈を受けていたり、結婚の際の多額の持 参金をもらった、事業のための資金の贈与を受けたなど、被相続人から婚姻、養子縁組または生計のための贈与を受けた者がある場合は、それらの遺贈や贈与をまったく考慮もせずに法定相続分に応じて遺産分割することは、共同相続人間の公平を害することになります。

     そこで、生前贈与などの受益分を計算し、被相続人が死亡時に有していた財産の価値に、生前に贈与された財産の価値を加えたものを相続財産とみなしたうえで、法定相続分にもとづいて算出した価額から、生前贈与を受けた分の価額を差し引いた金額を、相続分とします。これが特別受益の制度です。
      なお、贈与や遺贈の価額が相続分よりも多くても、返還を請求することはできません。

     生前の贈与が特別受益に当たる場合、現金の場合は貨幣変動を考慮した上で相続開始時の貨幣価値で計算します。土地や株式は贈与を受けた後に売却していたとしても、現物があるものとして相続開始時の評価額・株価で計算します。

     特別受益に該当する贈与であっても、被相続人が持ち戻しを免除していた場合は持ち戻し計算をする必要はありません。しかし、持戻免除の意思表示を書面で明確に残していることは多くありません。
      裁判例では、贈与した経緯や趣旨、その他被相続人が受贈者から利益を得ていたかどうかなどを総合的に考慮して黙示の意思表示を認定しているものもあります。遺留分を侵害する持戻免除も有効ですが、遺留分減殺請求があった時は持ち戻して遺留分の算定をすることになります。つまり、その限度で持戻免除は無効ということになります。

  • 遺産分割の際に考慮される「特別の寄与」とは何ですか

     特別の寄与とは、被相続人の生前にその財産の維持、または増加に特別の寄与貢献をしたことをいい、特別の寄与を価額に換算してして寄与分の価額を定めます。
     遺産分割の際には、寄与分は、相続財産から差し引いてから、残りの価額で遺産分割をします。したがって、寄与分のある相続人は、遺産分割による相続分に加えて、寄与分も受け取ることになります。

     寄与分として認められるのは、事業に関する労務の提供や事業に関する財産上の給付、病気の被相続人の看護、その他これらに相当するものです。具体的には、労務の提供として正当な給料をもらわずに仕事を手伝った場合や、看病をした場合などです。

     しかし、妻の通常の家事労働や妻としての夫に対する看病は特別の寄与貢献とはいえず寄与分にはなりません。看病が寄与分として認められるには、扶養義務を超えた著しい程度の療養看護が必要とされます。

     寄与分の存在を認めるかどうか、認めるとしてどの程度の価値になるかは相続人間の話し合いで決めますが、話し合いがつかないときは家庭裁判所に寄与分を定める審判を申し立てます。

  • 遺産分割協議書の署名・押印の方法などについて教えてください

     遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書の作成は義務ではありませんが、遺産分割協議の有無や内容を明確にして書面に残し、後日紛争となることを避けるためにも作成すべきです。相続による不動産の所有権移転登記の添付資料などとしても、遺産分割協議書が必要となります。

     遺産分割協議書は、法律で作成方法まで決められているわけではありませんが、相続人の人数分作成し、全員の署名・押印をして各自1部ずつ保管するよがよいでしょう。

     遺産分割協議書の署名押印は、可能な限り自筆で、また実印(印鑑登録印)を押印し、印鑑証明書を添付すべきです。このように作成することで遺産分割の結果について後で問題が起きないように各相続人の意思を明確化できますし、遺産分割協議の結果に従って不動産の相続登記をする場合などは、実印の押印された 遺産分割協議書を登記申請書に添付する必要があるからです。また、銀行預金などは、署名押印(実印)のある遺産分割協議書(印鑑登録証明書添付)だけでなく、各金融機関の所定の書面に各人の自筆による署名や実印による押印を求められるのが通例です。

  • 法定相続分とは異なる配分で遺産分割協議を行うことはできますか

      法定相続分とは異なる配分の遺産分割協議も、相続人全員が合意すれば有効です。むしろ、遺産分割協議が行われる場合には、法定相続分とは異なる配分が定められることの方が多いかもしれません。

  • 遺産分割協議書とは何ですか

     たとえば、『A不動産は母が相続』し、『B不動産は長男が相続』し、『C銀行の預金は長女が相続』するといった場合に、各相続人の間で被相続人の遺産をどのように分割するかについて合意をした内容を明確にし、書面化したものです。

  • 遺産分割協議書を作成する際に注意すべきことはありますか

     次のようなことに注意していただければ結構です。なお、形式や様式は自由ですが、ネット上で雛形を探してみるとよいでしょう。
    ① 被相続人と相続人の氏名を具体的に特定しましょう。
    ② 相続財産を具体的に特定し、その相続財産を相続される方の名前を明確に特定しておきましょう。なお、相続財産の特定方法は、不動産であれば登記簿上の表示、預金であれば銀行名・支店名・預金種目・口座番号等、自動車であれば自動車登録事項証明書上の表示などで特定しましょう。
    ③ 遺産分割協議書作成後に相続財産が新たに見つかった場合にどうするか、明確にしておきましょう。
    ④ 相続人全員が署名(自署)・押印(実印)し、全員の印鑑証明書をもらっておきましょう。

      当事務所で遺産分割協議書を作成することも可能ですのでご相談ください。

  • 相続人が海外に居住している場合の遺産分割協議書の作り方は?

     相続人のうち一部の方が海外に居住している場合は、現地 の領事館に行っていただき、領事の面前で遺産分割協議書にサインをして、そのサインについて領事の証明をしていただきます。また、もしも、帰国する機会がありましたら、公証人役場でパスポート等で本人確認したうえで遺産分割協議書にサインし、その証明を得ることも可能です。

  • 遺産分割の話し合いをしていたところ、兄が「自分が亡父の商売を手伝ったことによって財産を残すことができたのだから多くもらって当然だ」と言い出しました。兄の主張は認められますか

     被相続人に対し、財産の増加・維持に特別の寄与や貢献をした人がいる場合に、その人の相続分にその寄与、貢献に相当する分(寄与分)を上乗せすることになります。
     寄与分の算定は、相続人の間で協議して決めますが、相続人の間で寄与分が決まらない時などは、寄与した人が家庭裁判所に申立てをして定めてもらうことになります。

     寄与分が認められるケースは次の3つです。
     1. 被相続人の事業に大きく貢献してその財産を増加させた
     2. 被相続人の財産の維持に努めてきた
     3. 被相続人介護援助を長年続けた

     お兄さまが「自分が亡父の商売を手伝った」という主張をされているとのことですが、それが寄与分を認めるべきものなのか、また、認めるとしてもどの程度の寄与分を認めるべきか、よく話し合いをする必要があると思われます。

  • 遺産は銀行預金のみで、不動産はありませんが、遺産分割協議書を作成する必要はありますか

     銀行預金は、銀行が死亡の事実を知れば凍結されていますので、これを解約・名義変更等をするためには、相続人全員の実印の 押された同意書が必要となります。この同意書は、銀行に用意されていますので、銀行の指示にしたがって手続をすれば解約等をすることができます。

     この同意書も、タイトルこそ異なるものの遺産分割を証明する書類であるということができます。また、銀行預金を誰が相続するのかを定めた遺産分割協議書 (印鑑証明書付)を銀行に持ち込むことにより、銀行で用意した同意書を利用せずに預金を解約することもできます(戸籍謄本等、他に必要な書類は同意書を提出する場合と同じです)。

     したがって、遺産が銀行預金だけの場合であっても遺産分割協議書を作成する実益があります。
     さらに言えば、銀行預金が複数ある場合、同意書ですと銀行毎に同意書を作成しなければなりませんが、遺産分割協議書に複数の預金について記載しておけば1通だけ作成すればいいことになります。なお、遺産分割協議書は、解約の都度、銀行から原本を返却してもらってください。

  • 被相続人には子供が2人いましたが、遺産分割協議をする前にそのうち1人が亡くなってしまいました。その方には、配偶者と子供がいます。この場合、誰が相続人になりますか

     この場合、亡くなったお子様の相続権はその方の配偶者と子供(被相続人から見ると孫)に引き継がれています。したがって、その方々もいっしょに遺産分割協議を行う必要があります。

  • 相続人の中に認知症の人がいますが、遺産分割協議ができるでしょうか

     認知症の方など、判断能力が低下している方は、遺産分割協議等の法律行為を単独ですることができません。相続人に認知症の方がいる場合には、法律行為を代理する成年後見人等の選任を家庭裁判所へ申立てる必要があります。
     成年後見人が既に選任されている場合でも、その成年後見人が被成年後見人とともに相続人である場合は、成年後見人と成年被後見人の利益が相反することとなります。したがって、家庭裁判所で特別代理人を選任する必要があります。

  • 未成年者に特別代理人を選任するケースで、遺産の一部について未成年者以外のものに相続させる旨の遺言がある場合、未成年者の相続分はどのように考えればいいでしょうか

     相続人の中に未成年者がいる場合、遺産分割協議にあたって、家庭裁判所で特別代理人を選任しなければならないケースがあります。その場合、実務的には、遺産分割協議書案を提出しますが、未成年者の法定相続分が原則として守られている必要があります。もっとも、未成年者の母も相続人になっており、母が未成年 者の養育に相続財産を使用することを予定しているなどの合理的な理由があれば、未成年者の法定相続分を下回る分割案であっても特別代理人が選任されるケー スなどもあります。

     では、遺産の一部について、未成年者以外の者に相続させる旨の遺言があった場合はどのように考えるのでしょうか。

     最も合理的な考え方は、①遺言の対象となった財産については未成年者の遺留分の額、②遺言の対象とならなかった相続財産については法定相続分の額をそれぞれ算出し、①+②の合計額が遺産分割で未成年者に与えられればいいと考えられます。

  • 遺言の内容と異なる内容で遺産分割協議をすることができますか

     遺贈や「相続させる」旨の遺言が存在する場合、理論的には、遺言の効果は遺言者の死亡と同時に生じ、当該財産は受遺者等に帰属することになるため、相続財産を構成しないと考えられます。
     しかし、実務的には、相続人全員の合意により遺言と異なる内容で遺産分割をすることが可能であり、家庭裁判所の実務としても行われていま す。遺言執行者が選任されている場合には、民法1013条が「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることはできない。」と規定しているところから、相続人の合意が有効か否かが問題となります。

     この点について、東京地判昭和63年5月31日判決は次のように判示しています。
     「本件合意は、本件遺言の解釈及び執行上の問題点を調整、解決するため、遺言執行者が働きかけてなされたものであるが、<中略>民法一〇一三 条に規定する相続人による相続財産の処分行為に該当すると解する余地がある。しかしながら、右民法の規定は、遺言者の意思を尊重すべきものとし、相続人の 処分行為によ る相続財産の減少を防止して、遺言執行者をして遺言の公正な実現を図らせる目的に出たものであるから、右規定にいう相続人の処分行為に該当するかのごとく 解せられる場合であっても、本件のように、相続人間の合意の内容が遺言の趣旨を基本的に没却するものでなく、かつ、遺言執行者が予めこれに同意したうえ、 相続人の処分行為に利害関係を有する相続財産の受遺者との間で合意し、右合意に基づく履行として、相続人の処分行為がなされた場合には、もはや右規定の目 的に反するものとはいえず、その効力を否定する必要はないと解せられるのであって、結局、本件合意は無効ということはできない。」

     つまり、①相続人間の合意の内容が遺言の趣旨を基本的に没却するものでなく、②遺言執行者が予めこれに同意したという要件のもとに民法1013条が適用されないことを明らかにしているのです。

     次に、相続人全員が遺言の存在を知らないで遺産分割協議を行った場合について、最判平成5年12月16日は、遺産分割によって妻が相続したが、後に遺言が発見され、当該土地を3人の子供に相続させる旨の遺言が発見された事例ですが、錯誤無効の主張を斥けた原判決を破棄しました。その理由は次のとおりで す。
     「相続人が遺産分割協議の意思決定をする場合において、遺言で分割の方法が定められているときは、その趣旨は遺産分割の協議及び審判を通じて可能な限り尊重されるべきものであり、相続人もその趣旨を尊重しようとするのが通常であるから、相続人の意思決定に与える影響力は格段に大きいということができる。」「遺言の存在を知っていれば、特段の事情のない限り、<中略>本件遺産分割協議の意思表示をしなかった蓋然性が極めて高いものというべきである」

     いずれのケースも、「遺言の趣旨」を重視する点では共通しており、実務的には、遺言と異なる内容で遺産分割をする場合であっても、「遺言の趣旨」を尊重することが必要でしょう。

  • 相続財産であるアパートから発生した家賃収入は誰のものですか

      相続財産のうち、賃貸住宅があり、相続開始後、毎月4万円の家賃が発生していたとします。相続人は配偶者と子供二人。5か月後(つまり、家賃が20万円たまった)、遺産分割により賃貸住宅は配偶者が相続する旨の遺産分割協議が成立しました。さて、20万円はだれが取得することになるのでしょうか。

     相続財産に預金や賃貸住宅などがあった場合、相続開始後にそれらから生じた利息や家賃などの果実はどのような性質があるのか考える必要があります。まず、これらの果実が相続財産ではないことは明らかです。なぜなら、相続財産とは、相続開始時に存在した財産のことを言うのですから、相続開始の際に存在していなかった果実は相続財産ではないということになります。
     次に家賃が「5万円」という金銭債権であることにも着目しておきたいものです。

     遺産分割の効力が相続開始に遡ることを考えると、相続開始時に遡って元物の所有者が定まるのですから、果実も、元物の所有者となった物が取得するという考え方もあるでしょう。しかし、判例は、賃料について、「遺産から生じる賃料は遺産とは別個の財産であり、各相続人に帰属する」としています。しかも、賃料は金銭債権であるので、各相続人が相続分に応じて分割債権として確定的に取得するという趣旨の判断をしているのです。

     もっとも、相続人全員が合意すれば、果実も遺産分割の対象として遺産分割協議をするというのが家庭裁判所の実務のようです。

     最判平成17年9月8日
     遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,共同相続人の共有に属するものであるから,この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は,遺産とは別個の財産というべきであって,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取 得するものと解するのが相当である。遺産分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。

  • 母と同居して面倒をみるという負担付で遺産分割により相続財産を取得した者が母の面倒をみない場合、遺産分割を解除できますか

     母と同居して面倒をみるという負担付で遺産分割により相続財産を取得させたり、相続財産を取得させる代わりに代償金を他の相続人に支払うという内容で遺産分 割協議が成立することがあります。
     しかし、協議で定めた筈なのに母の面倒をみない、代償金を支払わない、という場合、どうすればいいのでしょうか。

     まず考えられるのは、債務不履行による遺産分割協議の解除ですが、「代償金を支払わない」という場合には、単に金銭債務を履行しないというだけであり金銭の支払いを求めて訴訟提起などすればいいのですから解除の問題ではなさそうです。そこで、「面倒をみない」場合の解除の可否について考えてみたいと思い ます。

    最判平成元年2月9日は次のように判示しています。
    「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が他の相続人に対して右協議において負担した債務を履行しないときであつ ても、他の相続人は民法五四一条によつて右遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である。けだし、遺産分割はその性質上協議の成立ととも に終了し、その後は右協議において右債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人 間の債権債務関係が残るだけと解すべきであり、しかも、このように解さなければ民法九〇九条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安 定性が著しく害されることになるからである。」

     ちなみに、民法541条とは次のような条文です。
    (履行遅滞等による解除権)
    第541条  当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

     この判決は、遡及効がある遺産分割が解除できるということになると法定安定性が著しく害されることになるから、民法541条によって遺産分割協議を解除することはできないといっているのです。

     しかし、相続人全員の合意により解除することは差し支えないようです(事案は異なるが、一般論として合意解除することができることを明らかにした最高裁判例として、最判平成2年9月27日 (共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然には妨げられ るものではなく、上告人が主張する遺産分割協議の修正も、右のような共同相続人全員による遺産分割協議の合意解除と再分割協議を指すものと解される))。

     では、次の問題として、「母と同居して面倒をみる」という負担を履行させるにはどのようにしたらいいのだろうか、ということが問題になります。

     遺産分割協議において相続財産を負担付を分割する場合、その負担の履行を確保する方法として、負担を履行しないことを遺産分割協議の解除条件とすることが考えられますが、東京地判昭和59年3月1日は、そのような合意は無効であるとしている。

     この事案は、遺産の大部分を被相続人の長男に取得させる旨の遺産分割協議がなされた場合において、このような分割協議がなされたのは、相続人の1人である被相続人の妻の老後の世話を長男の妻に期待したためであるとしても、その情誼関係の破綻をもつて遺産分割の解除条件とするのは相続による法律関係をいた ずらに不安定、不明確にするもので、そのような合意がなされたと認めることは相当でないし、仮にそのような合意があつたとしても、条件部分の合意は無効であるとしているのです。
     このように、やはり、法律関係の法定安定性という観点から無効としているのです。
     そうすると、間接強制類似の方法、つまり、債務不履行の場合には違約金を支払うなどの条項を設けるしか方法はないのかもしれません。

  • 父が亡くなりました。相続人は母と私と弟です。遺言があり、A土地は弟が相続し、そのほかは私が相続するように書かれていました。しかし、弟は、「土地を持つといろいろと面倒だからいらない」と言っています。この場合A土地はどうなるのでしょうか

     これ、実はなかなか難しい問題なんです。調べてみたら、考え方として3つあるようです。

     一つ目は、遺言書で遺産分割方法の指定や相続分の指定がなされている場合には、相続人は遺言者の意思に拘束され、自分の意思で変更できないという考え方です。この場合、どうしてもいらないということでしたら裁判所に相続放棄の申述をするしかありません。

     二つ目は、単純に、「いらない」ということでよろしいという考え方です。そうすると、A土地は宙ぶらりんになります。したがって、その帰属を決めるためには相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。

     三つ目は、全ての相続人の合意があれば遺言と異なる内容で相続関係を決めてもよいとする考え方です。

     では、裁判例はどのようになっているのでしょうか。

     平成21年11月18日の東京高裁の決定では、遺言が効力を生じた時点(つまり、被相続人が死亡した時点)で相続人の意思にかかわらず、不動産は遺言にしたがって相続人に承継されているという前提で事件を判断しています。つまり、「いらない」といっても相続されてしまっていますよ、ということです。

     そうすると、実務的には、特定の相続人の意思だけで「いらない」とすることはできないが、先ほどの三つ目の考え方により、相続人全員が合意すれば遺言書の内容にとらわれずに遺産分割をすることができるという方法を選択することになりそうです。

     なかなか奥が深いですね。

 

相続放棄限定承認についての相談事例

  • 相続放棄とはどのようなことですか

     相続放棄とは、その名のとおり相続人が遺産の相続を放棄することです。相続放棄をするためには、家庭裁判所に対し、被相続人の死亡を知った時から原則として3か月以内に相続放棄の申述をしなければなりません。遺産分割協議において何も遺産を取得しなかった場合に「放棄した」という方がいらっしゃいますが、この場合は、法律用語としての「相続放棄」ではありません。

  • 「相続放棄」と「遺産分割で遺産をもらわない場合」とでは、どのような違いがありますか

     相続放棄をした者は最初から相続人ではなかったものとみなされますが、単に遺産分割で遺産をもらわなかったというだけでは相続人としての地位は変わりません。むしろ、遺産分割をしたことにより相続を単純承認したこととなりますので、原則として、相続放棄をすることができなくなります。  具体的に、どのような場合に違いが出てくるかですが、一例として、被相続人の借金については、相続放棄をすれば免れることができますが、遺産分割で特定の相続人が借金を引き受けると定めたとしても債権者が同意しなければ相続人全員が法定相続分にしたがって借金を相続することになります。

  • 相続放棄の申立てについて時間的制約はありますか

     相続放棄は、自分が相続人となったことを知った時から原則として3か月以内にする必要があります。 「自分が相続人となったことを知った」とは、被相続人の死亡により自分が相続人となったことを知った場合はもちろん、先順位の相続人が相続放棄したことを知った時なども含みます。

     民法の条文は次のとおり規定しています。 第915条  相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただ し、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

     ここで、熟慮期間の起算点について、条文では「自己のために相続の開始があったことを知った時」となっていますが、その意味について、大決大15.8.3は「相続人カ相続開始ノ原因タル事実ノ発生ヲ知リタル時ノ謂ニ非スシテ其ノ原因事実ノ発生ヲ知リ且之カ為ニ自己カ相続人ト為リタルコトヲ覚知シタル時」 をいうと説明しています。

     この考え方が原則として今でも生きていますが、例外として、3か月以内に相続放棄等をしなかった場合でも、それが相続財産・債務が全くないと信じたためであり,かつそう信じたことに相当な理由がある場合には,相続財産・債務の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識できる時から起算することとなります(最判昭和59年4月27日)。

     なお、遺産の調査に時間がかかり、3か月経過時点では相続放棄をするか否か判断がつかない場合には、家庭裁判所に対し、3か月の期間を延長する申立てをすることもできます。

  • 相続放棄をすると、相続財産(借金も含む)はだれが相続することになりますか

     相続放棄をした者ははじめから相続人ではなかったものとみなされますので、相続放棄をした者と同じ順位の相続人がいる場合には他の相続人が相続することとなります。例えば、相続人が子供3人だけの場合に、そのうち一人が相続放棄をすると、残り2名が相続することとなり、法定相続分は2分の1ずつとなりま す。

     しかし、同じ順位の相続人の全員が相続放棄をした場合には、次の順位の相続人が新たに相続人になります。たとえば、第1順位である子供全員が相続放棄をすると、第2順位である直系尊属が相続人になります。

     もっとも、相続人となるべき者すべてが相続放棄をしてしまうと相続人が全く存在しないと言う状態になります。借金が多い場合にこのような状態になることが多く、「相続人不存在」と言われています。

  • どのような場合に相続放棄の手続が利用されていますか

     圧倒的に多いのは、被相続人が借金を負っていたため借金を承継することを免れたいという場合、又は、プラスの財産よりもマイナスの財産である借金の方が多いためプラスの財産も借金も承継したくないという場合です。  次に多いのは、他の相続人とは疎遠になっているため遺産分割の話し合いもしたくないという場合です。  そのほかにも、様々な事情で相続放棄が利用されています。

  • 相続財産からわずかな金額を葬儀費用に使用した場合と相続放棄の可否

     大阪高決昭和54年3月22日の事例は次のようなものでした。  当事者は、被相続人X、妻Y1、子Y2、Y3でしたが、Y1とY3はXの暴力などによりXと別居しており、Xと同居していたY2も、Xが自宅を売却したために家を出て行かざるを得ず、その後、Xと音信が途絶えてしまいました。  昭和51年に、突然警察から、Y3に電話があり、Xが死亡した旨の連絡がなされ、遺体は既に火葬されていたので同人の遺骨を貰い受け、警察署から約金2万の所持金と、ほとんど無価値に近い着衣などの引渡を受けたものの、その場で医院への治療費1万2000円、火葬料3万5000円の請求を受けたので、Xの所持金にY3らの所持金を加えてこれを支払いました。  その後2年以上後、訴訟が提起されたことによりXは約145万円の債務があることを知った。そこで、Y3らは相続放棄の申述をしました。

     この判決は、なかなか読み応えのあるものであるので、一度見ておいていただきたいと思いますが、取り急ぎ興味がある問題として、相続財産から僅かな金額を葬儀費用に支出した場合、単純承認事由である「処分」にあたるのかについて判旨を見ておきたいと思います。

    「古い「家」制度の維持のための相続法では、相続人は、たとえば、旧民法上の法定推定家督相続人のように己れを犠牲にしてでも債務を含めた相続を甘受しな ければならず、相続の放棄は相続人の恣意にゆだねられないところであつた。しかし、古い「家」の観念が崩壊し、個人の尊厳とその意思の尊重を基盤とするに至つた現行相続法においては、人は己れの意思に反してまで義務を負わされることがなく、相続の放棄も相続人の自由であるとされ、民法九一五条はすべての相続人に相続の単純承認、限定承認、放棄を選択する自由を与えている。そして、相続の放棄は、初めから相続人とならなかつたものとすることによつて、債務超 過ないし債務のみの相続によつて相続人が過大なしかも自ら関与しない債務を負うことによる不利益から相続人を保護しようとするものであり,相続人に認められた選択の自由ないし放棄の自由は相続人の基本的人権にも繋がる重大な事柄である。  元来、債権者は債務者である被相続人の一般財産を引当としてその債権の履行を強制し得るに過ぎないのであつて、それを越えて相続人自身の財産から満足を受けるというのは全くの僥倖というほかはない。そうであるからこそ、相続人の債権者において、相続人の固有財産と相続債務の混同を防止するため、民法九五〇条により相続人の財産の分離請求をすることが許されており、さらに、相続人が相続債務の債権者を害することを知つていたとしても、なお相続の放棄が許されるのであつて(最判昭四九・九・二〇民集二八巻六号一二〇二頁)、債権者保護に優先して相続放棄ないしその選択の自由を十分に確保する必要があり、これを実質上形骸化するような熟慮期間徒過についての安易な解釈、運用は許容できないところである。」

    「前示相続の根拠及び民法全編を通ずる個人の尊厳ないしその意思の尊重の要請並びに民法九二〇条の「単純承認をしたとき」との文言に照らすと、単純承認は 相続人の自発的意思表示に基づく効果であり、同法九二一条による単純承認の擬制も相続人の意思を擬制する趣旨であると解すべきである。したがつて、とくに遺産が債務のみの場合には相続人が通常この債務を承継してその支払を引受ける自発的意思を有することは稀なことであるから、その債務承継の意思の認定ないし擬制を行なうについては、特に慎重でなければならない。」

    「被相続人の所持金二万〇四三二円の引渡を受けたけれども、右のような些少の金品をもつて相続財産(積極財産)とは社会通念上認めることができない(このような経済的価値が皆無に等しい身回り品や火葬費用等に支払われるべき僅かな所持金は、同法八九七条所定の祭祀供用物の承継ないしこれに準ずるものとして 慣習によつて処理すれば足りるものであるから、これをもつて、財産相続の帰趨を決すべきものではない)。のみならず、抗告人らは右所持金に自己の所持金を加えた金員をもつて、前示のとおり遺族として当然なすべき被相続人の火葬費用ならびに治療費残額の支払に充てたのは、人倫と道義上必然の行為であり、公平ないし信義則上やむを得ない事情に由来するものであつて、これをもつて、相続人が相続財産の存在を知つたとか、債務承継の意思を明確に表明したものとはいえないし、民法九二一条一号所定の「相続財産の一部を処分した」場合に該るものともいえないのであつて、右のような事実によつて抗告人が相続の単純承認をしたものと擬制することはできない。」

     どうでしょうか。被相続人の金品を使ったから「処分」にあたる、などという単純なものではなく、相続制度の根元から掘り下げて検討されたすばらしい判決ですね。

  • 限定承認とはどういうことですか

     相続人が、相続によって得た財産の限度においてだけ被相続人の債務および遺贈を弁済することができる制度です。  限定承認を利用すれば、被相続人の債務は相続財産だけで清算し、たとえ相続財産で足りないときも、相続人は自己の財産で弁済する義務を負いません。また、清算の結果、相続財産が余ればこれは相続人に帰属します。  限定承認をするには、被相続人が亡くなったことを知ったときから3か月以内に財産目録をつくって家庭裁判所に申し出をする必要があります。この期間内に申し出をしない場合や、相続財産を処分(遺産分割をしたり預金を解約したり債務を支払ってしまったりすることなど)してしまった場合などには、限定承認ができなくなりますので注意が必要です。

  • 夫が亡くなりましたが住宅の時価よのも多額の住宅ローンが残っています。相続放棄した方がいいでしょうか

     住宅ローンを借りる際、住宅ローンの債務者が死亡すると生命保険で残金を清算する団体信用生命保険に加入している場合があ ります。その場合には、住宅ローンは生命保険で支払われることになりますから相続放棄を検討する必要はないと思われます。  団体信用生命保険に加入していない場合には、連帯保証人がいるかどうかも確認する必要があります。たとえば、あなたが連帯保証人になっているとしたら、 相続放棄をしても連帯保証人の義務は逃れることはできませんので相続放棄することに意味はありません。  いずれにしても、団体信用生命保険に加入していない場合、住宅は生活の本拠ですので、慎重に検討した方がいいと思われます。

 

相続トラブルについての相談事例

  • 相続人の一部が話し合いに応じないのですが

     相続人の一部の方が話し合いに応じない場合には遺産分割協議が成立しません。
     その場合には、各相続人は家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをすることができます。調停により合意が調えば、裁判所が作成する調停調書を用いて不動産の相続登記などの手続をすることができます。
     調停によっても合意が整わない場合は調停は不調となり、審判手続に移行して審判が出されます。

  • 相続人の1人に行方不明の者がいる場合、遺産分割協議はどのようにすればいいでしょうか

     行方不明の方がどのような状態なのか調査する必要があります。現住所が不明ということであれば、戸籍の附票等を調査することで住所が判明する場合があります。
     しかし、住所が市区町村役場の職権で抹消されていたり(職権消除)、登録されている住所に居住していなかったりすることも少なくありません。そのような場合、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てをするか、失踪宣告の申立てをする必要が出てきます。どちらの申立てをするかはそれぞれの事案によります。
     不在者財産管理人選任の申立てをして財産管理人が選任されれば、不在者財産管理人は裁判所の許可を得て遺産分割協議に参加することができます。失踪宣告の申立てにより失踪宣告がなされ、死亡が擬制された場合には、失踪者の相続人が参加するなどして遺産分割協議を行うことができます。

  • 特別受益証明書に押印しましたが、実際には特別な受益は受けていません。特別受益証明書は無効だと思うのですが

     当事務所ではほとんど利用したことはありませんが、遺産分割協議書を作成せずに共同相続人中の1人あるいは一部の者の所有名義に相続登記するために、他の相続人から特別受益証明書を提出させているケースをまま見かけることがあります。
     また、相続の相談を受けていると、言われるままに特別受益証明書記載して提出したが、実際には、特別受益は受けていないという相談を受けることもあります。

     これらのように、便宜上、特別受益証明書を作成した場合、実際には特別受益を受けていないときは、当該書面の効力はどうなるのだろうか。
     つまり、特別受益証明書の意味が過去の客観的事実の証明にすぎないという解釈をすると、その内容が虚偽であるのだから当然に相続分を失なうということはなく、分割請求ができることになる。一方、特別受益証明書を作成した趣旨が、相続分の事実上の放棄であったり、相続分を取得しないという分割協議であるということになると、特別受益という事実の有無かかわらず無効とはいえず、改めて遺産の分割請求をすることはできないことになるのです。

     判例は肯定した例の方が否定した例より多いようです。しかも、否定した例は、特別受益証明書を作成した経緯が、周囲の者の圧力があったとか、他の者が偽造したものであった、他からの侵害から守るために通謀的に行われたなど、民法の一般原則から見ても無効であったり取り消しうるようなケースが多いようです。
     そうすると、そのような無効・取消事由がない場合は、原則として有効と考えざるを得ません。

    無効とした判例
    ・「証明書」に本人の署名・捺印があるが、これは単独で遺産を承継する相続人や他の周囲の者の圧力によって生じたもので、必ずしも本人の真意に基づくものとはいい難い(大阪高決昭40.4.22)。
    ・「証明書」への署名・捺印が他の共同相続人ないしは第三者の偽造文書であるとき(東京高判昭56.5.18)
    ・単独で遺産を承継する相続人名義にしたのは、遺産を他に売却し、もしくは他からの侵害から守るための方便に過ぎず、右相続人の単独所有に帰せしめる合意に基づくものではない(大阪家審昭40.6.28)。

    有効とした判例
    ・相続分なきことの証明書による単独相続登記の方法が分割協議の便法として登記実務上多用されている現状を考えると、仮に右証明書の記載どおりの生前贈与がなくとも、相続人間に全遺産を一相続人の単独所有に帰せしめる旨の意思の合致があった以上、これにより実質的な遺産分割協議がなされ、その過程で遺産に対する共有持分権の放棄又は贈与がなされたとみ得るから「相続分なきことの証明」による単独相続登記を無効とする必要はない(福島家審昭53.8.16)
    ・持分権の贈与と解した事例(大阪高判昭49.8.5、京都地判昭45.10.5、大阪高判昭53.7.20)
    ・相続分不存在証明書及び印鑑登録証明書を交付したころまでに遺産を単独取得する旨の遺産分割協議が成立したものと認め、相続分不存在証明書は遺産分割協議に基づく登記手続上協議書の提出に代えてこれを用いたものと解した事例(東京高判昭59.9.25)

  • 遺産分割の話し合いをしてい たところ、兄が「自分が亡父の商売を手伝ったことによって財産を残すことができたのだから多くもらって当然だ」と言い出しました。兄の主張は認められますか

     被相続人に対し、財産の増加・維持に特別の寄与や貢献をした人がいる場合に、その人の相続分にその寄与、貢献に相当する分(寄与分)を上乗せすることになります。
     寄与分の算定は、相続人の間で協議して決めますが、相続人の間で寄与分が決まらない時などは、寄与した人が家庭裁判所に申立てをして定めてもらうことになります。

     寄与分が認められるケースは次の3つです。
     1. 被相続人の事業に大きく貢献してその財産を増加させた
     2. 被相続人の財産の維持に努めてきた
     3. 被相続人介護援助を長年続けた

     お兄さまが「自分が亡父の商売を手伝った」という主張をされているとのことですが、それが寄与分を認めるべきものなのか、また、認めるとしてもどの程度の寄与分を認めるべきか、よく話し合いをする必要があると思われます。